全国精労協結成宣言

 我々精神医療現場で働く労働者は、それぞれの地域・職場で、労働者の生活・権利の獲得と改革を目指し、精一杯の闘いを展開してきた。それそれの労組は闘いの目標は共有できるものを持ちながら、しかし今日まで精神病院労働組合の全国的な統一組織、あるいは協議体すらない現状で、それぞれの組合が単産別、地域別に困苦奮闘してきたのである。

 そのような状況だからこそ全国的な運動展開が求められ、幾つかの労組、単産支部は手探りの中からお互いに情報・資料の交換を行い、更にそれぞれの枠を越えて春闘の連携、争議支援を全国展開するという実績を作り上げてきた。

 こうした中で89年2月には、全国一般医療部会の主催で第4回精神病院労組全国交流会が岐阜で開かれ、89春闘の討議の中で、従来の情報・資料交換の限界を越えた、全国杓な闘争展開の方針が確認されて行った。統一方針のもと闘われた89春闘は、医療費抑制の厳しい状況にありながら各地で5ケタ回答を次々と引き出し、4労組ではストライキが力強く打ち抜かれた。また三枚橋病院の労組潰しに対しては、全国規模での抗議・支援を集中することで不当労働行為を撤回させ、勝利することができた。これらの画期的な経験と成果は、全国的な精紳病院労組の結集の気運を高めてきたのである。

 今日、精神医療を巡る情勢は、医療費の長期抑制政策の下、医療法改正が政治的日程にのぼらんとしており、精神病床数の削減政策等、精神病院が生き残りをかける厳しいものとなっている。そこで病院当局からの労組形骸化・組合潰しの攻撃は強まりつつある。

 かたや宇都宮病院事件以降、精紳保健法が施行され、他方開放医療の潮流を中心に全国各地で人権センターなとの運動が創られ、精神病者の人権と医療の内実が鋭く問われる時代を迎えている。精紳医療労働者の誇りとしても、医療現場の改革は重要である。精神病院の閉鎖性は、労働条件の劣悪さの温床でもある。

 89年、戦後の労働運動を担ってきた総評が解散し、労働組合運動は大きな転換点を迎えている。今こそ、単産枠、地域枠を超えた我々自身の運動構築の必要性が迫られてきている。

 医療法改正により最も大きな打撃を受けると予測される精神病院、関連施設に働く我々は、今後の情勢の中で、行政、病院当局との激しい闘いを否応なく強いられるであろう。

 故に、過去の病院労組の枠を越え、精神医療全体に関わるすべての労働者が結集しうる、広く力強い運動を展開しなくては、我々自身の生活、権利すら防衛できないであろう。

 これらの必要性において我々は結集し、「全国精神医療労働組合協議会」〔全国精労協)を創設する。全国精労協は闘争目標を共有しうるあらゆる労組、精神医療関連労働者との協力関係を求め、多数の精神医療関連労倒者の組織化を図り、全国精神医療労働運動の発展に寄与せんとするものであると、ここに宣言する。

1990年1月27日